
【セットリスト、衣装、演出など全てのネタバレを含みます】
ACIDMANの4年振りのアルバムリリースに伴う「ACIDMAN LIVE TOUR“INNOCENCE”」が、3月5日、東京・LINE CUBE SHIBUYAで初日を迎えた(*以下、ネタバレを含む)。

アルバム『INNOCENCE』の楽曲をワンマンライブで披露するのは、リリース前の昨年夏に開催して大きな話題を呼んだ「『INNOCENCE』プレリリースツアー」以来のことだ。同じアルバムで二度ツアーを回るほど、メンバーがこの作品にかける思いは強く、強烈なブルーのバックライトに照らされたドラマチックな「introduction」から、気迫みなぎる演奏で圧倒する。オーディエンスも、声の代わりに熱い拍手に気持ちを込めて返す。序盤から感情を揺さぶられる、エモーショナルなシーンだ。

「その拍手で、うるっときちゃいます。本当にありがとう。この瞬間だけは共にイノセンスな、真っ白な気持ちになれるような、そんな1日にしましょう」(大木伸夫)
3人の衣装はすべて鮮やかな白。セットリストはアルバムの曲順通り、ミラーボールの美しい演出が映える「Visitor」、「歪んだ光」へと熱気を増しながら突き進む。リリースからおよそ5か月、アルバムを聴き込んでいるオーディエンスは爆音に身を浸しながら体を揺らす。さらに「Rebirth」から「イコール」「スロウレイン」「Ride the wave」へと、過去の楽曲へとさかのぼってゆくが、カラフルでポジティブな解放感のある『INNOCENCE』の空気感がステージを覆い、ライブ全体のムードが明るい。演奏はラウドで激しいが、あたたかく包まれるような高揚感が、これまでのACIDMANのライブとは一味違う。

「「灰色の街」は非常にポジティブな曲です。世の中が、特に音楽業界が大変な中で、この曲がずっと僕たちを引っ張っていってくれたなと思います」(大木伸夫)
まるでコロナ禍を予言したかのような、灰色と化した街に、やがて芽吹く小さな花という希望を歌う歌。「灰色の街」は、2019年暮れにライブで初披露して以降、聴くたびにメッセージの深みを増してゆく、「育つ歌」だ。そして、大木の弾くアコースティックギターの生々しい響きが心揺さぶる「素晴らしき世界」へと、『INNOCENCE』の核心を成すメッセージチューンを2曲続けて。ソウルやゴスペルを思わせる力強く前進するリズムに乗り、音楽の力が空気を伝って直に届く。これがライブだという実感がじわりと身に沁みる。

中盤、恒例のユーモラスな浦山一悟のMCのあとを受けた大木が、11月に開催が決まった主催フェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL“SAI”2022」の詳細を発表した。結成25年、デビュー20年の晴れ舞台に挑むバンドを励ますように、会場内はあたたかい拍手に包まれる。曲はフェスのテーマ曲でもある「彩-SAI-(前編)」から、大木がピアノを弾くダンサブルなインスト「Link」を経て「ALE」へ。願いはきっと星に変わる、という歌詞を体現するように、ミラーボールの閃光が光の矢のように宙を刺す、とても美しい光景。
だが一転して「2145年」では、人の心が持つ希望と愚かさの両面を、心を持ったロボットを主人公にした近未来的設定で描く歌詞を歌いながら、大木が声を詰まらせてしまった。おそらく、現在の東欧で起きている出来事が脳裏をよぎったのだろう。歌い終わり、暗転したステージに向けて、会場いっぱいの拍手がいつまでも鳴りやまない。歓声や掛け声がなくても、気持ちは届くことを証明する、素晴らしいシーンだ。

「人と人とはもっと繋がり合えるはずだと、きれいごとだからこそ、歌い続けたいと思います。この世界は、闇と光が同居しているからこそ、意味が生まれてくるんだと思います。だからどうか、嫌なことがあっても、最後まで生き抜いてください」(大木伸夫)
生き抜くんだ、と何度も叫ぶ「夜のために」は、アルバムの中でも特に激しいロックチューンで、ライブの盛り上がりもすごい。さらに「Stay in my hand」から「ある証明」へ、ACIDMANが誇るラウド&ファストチューンを連ねて一気に突っ走る。佐藤雅俊が、かぶっていたキャップを飛ばして暴れ回る。点滅するライトがぐるぐる回る。「心の中で叫んでください!」と大木が叫ぶ。クライマックスはもうすぐそこだ。

「ライブはやっぱり、かけがえのないものです。こんなにも感情が動くものは、何にも代えがたいものだと気づかされました。これからも前だけ向いて音楽をやっていきます」(大木伸夫)

本編を締めくくったのは、『INNOCENCE』のフィナーレと同じく「innocence」「ファンファーレ」の壮大なラウドロックバラード二連発。強烈な白い光がステージから流れ出し、多くのファンから送られた歌声をコーラスに配した「ファンファーレ」の、最上級にドラマチックなラストシーンを、どう言葉にすればいいだろう。「この声の一人一人に背中を押されました」と、アウトロの深い余韻の中で大木が叫んだ。激しさと、儚さと、美しさと、光と闇と。音楽の力だけでいくつもの感情と情景を聴き手の心に映し出す、ACIDMANはやはりすごいバンドだ。

アンコールは1曲。「Your Song」を歌う大木の顔は晴れやかで、ポジティブな情熱に溢れて見えた。「またライブで会いましょう」。『INNOCENCE』の演奏の完成度はすでに高く、全国9か所を巡って7月3日の新潟LOTSでのツアーファイナルに近づく頃には、とてつもないレベルになっているだろう。ACIDMANはやはりライブバンドだ。この2年間で忘れかけているライブの興奮を思い出したいなら、ACIDMANのライブを観るべきだ。
<SET LIST>
ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”
2022年3月5日(土) LINE CUBE SHIBUYA
introduction
Visitor
歪んだ光
Rebirth
イコール
スロウレイン
Ride the wave
灰色の街
素晴らしき世界
彩-SAI-(前編)
Link(instrumental)
ALE
2145年
夜のために
Stay in my hand
ある証明
innocence
ファンファーレ
En.Your Song
【公演情報】
ACIDMAN presents「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022」
開催日:2022年11月26日(土)、27日(日)
会場:さいたまスーパーアリーナ
(問)SOGO TOKYO (03-3405-9999)
■出演アーティスト
ACIDMAN
ASIAN KUNG-FU GENERATION
THE BACK HORN
STRAIGHTENER
10-FEET
Dragon Ash
and more…(50音順)
※出演日、タイムテーブルは後日発表いたします。
※出演アーティストは変更になる場合がございます。
■チケット
アリーナ 15,000円/1DAY
スタンド席 15,000円/1DAY
KIDS(スタンド席)※半額 7,500円/1DAY
※対象:小学生(小学1年生〜6年生)
「SAI」オフィシャルサイト
<SAI>
ACIDMANが、2017年に結成20周年のアニバーサリーイヤー集大成として初主催したロックフェス「SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI”」を、2022年11月26日(土)、27日(日)に5年ぶりに開催。会場は、前回同様、メンバーの故郷である埼玉県のさいたまスーパーアリーナ。
初回開催時は、10-FEET、MAN WITH A MISSION、THE BACK HORN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、the HIATUS 、BRAHMAN、RADWIMPS、Dragon Ash、STRAIGHTENERが出演。(出演順)ACIDMANの盟友であり、各フェスのメインアクトをつとめる超豪華なバンドが勢揃いし、チケットは即日ソールドアウト。“伝説のフェス”として、再開催を望む声が届き続けていた。
ACIDMAN結成25周年イヤーとなる2022年は、開催も2daysとなり、ロックバンドの強さと逞しさを、更に多くのオーディエンスに届ける。
メンバーコメント
初回開催時の映像作品『ACIDMAN 20th ANNIVERSARY FILM “SAI”』を2022年の開催までの1年間の期間限定で、Youtubeにて無料公開中
フェスタイトルである「SAI」は、「埼玉県の“埼”」「祭りの“祭”」「才能の“才”」「ACIDMANの楽曲タイトル【彩-SAI-前編/後編】の“彩”」などからイメージしたもの。
【公演概要】
ACIDMAN LIVE TOUR “INNOCENCE”
■スケジュール
2022年3月 5日(土) 東京・LINE CUBE SHIBUYA/全席指定
2022年3月11日(金) 福島・いわき芸術文化交流館アリオス 中劇場/全席指定
2022年3月21日(月・祝) 福岡・UNITEDLAB/席種未定
2022年4月 9日(土) 広島・JMSアステールプラザ 中ホール/全席指定
2022年4月22日(金) 大阪・大阪国際交流センター 大ホール/全席指定
2022年6月3 日(金) 東京・Zepp DiverCity/席種未定
2022年6月12日(日) 宮城・仙台PIT/席種未定
2022年6月26日(日) 愛知・Zepp Nagoya/席種未定
2022年7月 3日(日) 新潟・NIIGATA LOTS/席種未定